田んぼ道のど真ん中に車を停めて、リクライニングを倒し、
手を繋ぎながら仕事の話や家の話をした。
42歳のワニ先輩は男三人兄弟の長男だった。
幼い頃両親は離婚し、祖父母と母親に育てられ、お祖父さんのことを大変尊敬していた。
そのお祖父さんはワニ先輩が20歳の頃亡くなった。
兄弟はそれぞれ家庭を持っている。
弟たちに結婚の順番を抜かされて、どんな気分だったのだろう。
私だったら嫌だなと思ったがそれは言わないでおいた。
ワニ先輩は子どもに好かれる体質だった。
よくいる、子供の前で子どもになれるタイプ。
姪や甥を大変可愛がっているようだった。
「甥っ子が高校入試を控えていてさ、親(ワニ先輩の弟とその奥さん)じゃなくて、俺に相談してくるんだ」
「甥っ子も親より俺の方が本音で話しやすいみたいでさ」
この自慢は聞いていて不愉快だった。
ワニ先輩は服もダサかったが、思考もダサかった。
ワニ先輩は人間関係に首を突っ込み、自分の方を向かせる才能がある。
某先輩
「ワニくんはお客さんの気持ちを奪っていく」
私たちの仕事は、1人につき20人から30人のお客さんを担当する。
単独プレーではなく、職場の人間同士連携を取りながら仕事をする。
ワニ先輩は平気で他の人のお客さんに接近し、
自分の方が素晴らしい仕事ができるとわざわざアピールし、
時にはお客さんに「担当を変えてほしい」と不満を持たせる。
お客を奪われた人の力不足といってはそれまでだが、お客の気持ちを奪われても、別に給料は変わらない。
ワニ先輩の場合
・振り向かせた俺、かっこいい
・振り向かせた俺、最高
・頼られて鼻が高いぜ
という思考だった。
職場だけでなく、プライベートでもこの考えは一貫していた。
私のことも
20歳も年下の女を振り向かせた
くらいにしか思ってなかったのかもしれない。
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